教会の鐘とともにある生活

今日は日曜日。教会の鐘が朝から厳かに鳴り始める日。

ここドイツでは多くの人が教会に足を運ぶ日でもある。

 

「こんなに鐘が長くなっているということは、今日は日曜日だ。」という具合に、もしその日の朝に鳴る鐘の音がいつもより長く続くようなら、その日は日曜日ってことだ。

 

日曜日、パン屋さんなどを除くほぼ全てのお店は閉じられて、朝方の街はしーんと静まり返っている。

 

教会は、私の住んでいる家の周辺だけに限っても、少なくとも2つはある。街全体でいうと13くらいあった気がする。だから、この街にいる限り教会の鐘の音を聞かないことはない。

 

教会の鐘は、朝の9時ごろから夜の8時頃まで30分おきに鳴る。

だいたい「ゴーン」の一回で終わるけど、教会内で何かの催し物があるときはそうとも限らない。

 

ちなみにこの文章を書いている今現在も、教会の鐘がゴーンゴーンと鳴っております。あ、止んだ。あ、雨が降ってきた。窓を閉めなくては。

 

 

クリスマスなどの大切な行事が近づいてくると、教会で催し物が行われることも多い。そんなときふと目を向けると、入り口に行列ができていたりする。

 

きっとあの中で行われるのは、大切な人に向けた静かな祈りの時間。

 

 

 

教会とは違うけれど、日本の私の実家から歩いてすぐのところにはお寺がある。

 

そのお寺からもまた鐘の音が聞こえる。いつでも変わらない、ゴーンゴーンという静かな鐘の音を聞くのが好きだった。

 

ドイツの教会の鐘の音よりも少し低くて、長く余韻のある音。

 

 

休みの日に朝6時ごろに起きて窓を開けると、お寺から鐘の音が聞こえてきて、そういう日は「あ、今日は早起き出来たんだ~」と嬉しくなったりして。

 

そのお寺ではお正月の除夜の鐘から始まり、お彼岸、お十夜など毎月何かしらの行事が催されている。写経もできるし、精進料理もいただける。

 

お正月には多くの人が除夜の鐘をつきにやってきて、またお十夜では多くの屋台が立ち並ぶ。

 

お十夜が始まった日の夜の6時頃。

 

太陽が沈んで空が暗くなりはじめると屋台が次々に組み立てられていって、そうしているうちにどこからともなく近所の子どもたちがワイワイ賑やかにやって来る。

 

遊びに来るのは子どもたちだけではなくて、その家族や学校の先生も来る。浴衣姿のお姉さんたちも、いい感じの雰囲気のカップルも。

 

屋台はたこ焼き、お好み焼き、チョコバナナなどの定番メニューを売り出しているお店から数珠が並べられているお店、日本各地の郷土玩具を揃えたようなちょっと珍しいものまで様々。

 

つぎつぎ焼き上がるフランクフルトのジューシーな匂いに、昭和っぽいおもちゃの鉄砲撃ちに挑戦している男の子の歓声、混み合う屋台の中でカランカランとベルを鳴らして「おめでとうございます、チョコバナナもう一本当たりました~!」と叫ぶお兄さん。

 

どんどん盛り上がっていく。

 

ところで私の個人的なお気に入りのメニューはというと、イカ焼き。あのちょっと黒々とした肉厚イカに香ばしい匂いを放つお醤油がなんてマッチしていること!たまらないよね。お醤油が油断すると垂れるので、服を汚さないように注意が必要だ。

一パック500円くらいだったかな。

 

普段はたった500円でも本当に買って良いものかどうかずいぶん悩むのに、こういうお祭りの賑やかさのなかでは、ついお財布の紐も緩くなってしまう。

 

それからアツアツの大きくてしっかりとタコの入ったたこ焼きも好き。お祭りで買うと6つくらいしか入ってないけど一つ一つが大きくて、タコの他にも具材がみっちり詰められている完璧なたこ焼き。これも一パック500円くらいだ。

 

 

普段はほんとうに静かで、ただただ厳かで澄んだ「気」だけが存在しているような境内が、この時期だけはどこかからワアッと人が集まって来るから不思議だ。

この辺りってこんなに人が住んでいたんだ、と思ってしまう。

 

 

行事のないときにはお寺にやってくる人は多くなくて、たいていは気持ちよさそうに日向ぼっこしている猫しかいない。

 

時間が、ゆっくりと過ぎていく。

 

 

春。華やかに咲く桜の木の下には、いつものように気持ちよさそうに丸まって眠る猫たちの姿がある。

のんびりと寛ぐ猫たちを見ているととても穏やかな気持ちになる。

 

何でもないとき、ふだんのお寺で出会うのは、この猫たちの他にはお散歩中の犬とその飼い主さんくらいだ。猫はお寺に住みついているのだと思う。

 

私はお祭りをしているときの賑やかなお寺も好きだし、心が洗われるようなふだんの静けさも好き。

 

6歳の時にこの土地に引っ越してきて、18歳でドイツへ留学するまでの12年の間に、そのお寺は私にとっていつのまにか無くてはならない存在になっていた。

 

 

高校受験のときにはお守りを買いに行ったし、遠くに住む友達が遊びに来たときにはまるでお寺が自分の家であるかのように、境内を歩いて紹介してまわった。(笑)

 

お寺からは、すべてが浄化されるような清らかな「気」が感じられて、それが自分にも分け与えられるような感覚があり、それが私を癒し、安心させてくれた。

自宅から歩いてすぐのところにあるこじんまりしたそのお寺は、私にとってそういう存在だった。

 

 

今また教会の鐘がゴーンと短く鳴った。

 

日本からドイツにやってきて一年半。

 

ドイツの自分の家から歩いてすぐのところにある教会は、レンガ造りの、ステンドグラスが印象的な、いつも人の出入りが多いドーンとした大きな教会。

 

学校の合唱のコンサートの会場として使われることも多く、たぶんこの街の人から誇りに思われている教会。

 

これまであちこちで、何度もいろいろな教会に入ったことがある。とても大きくて立派な教会や、シンプルだけど清楚で落ち着いた佇まいの教会。

 

教会の中も、人を包み込むような温かい雰囲気があって気持ちが落ち着くから好き。

 

 

とはいえこの近所の教会にはまだ、なんとなく勇気が出なくて(入場料が2€かかるのもあるかも)入ったことがない。

 

いつか入ってみたいな。そこにもいつものように清らかで厳かで静かな空気が流れていると思うから。