ドイツ音大受験その3

受験までの道のり

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実技試験をパスした人を待ち構えているものが、聴音の試験と副科ピアノの試験。

聴音/和声の試験と副ピの試験はほとんど同時に行われた。最初に聴音試験でその次にピアノの人もいれば、その逆の人もいた。そうして最後に来るのが和声の口頭試験。私は、この和声の試験に強い不安感を抱いていた。なぜかって、そこではまたドイツ語を話さないといけないからだ。しかも今度はもちろん自己紹介程度では済まず、聴音の和声課題で担当の先生から聞かれた質問に対してドイツ語で答えなければいけない。

その部屋には男性の先生が2人いて何か楽しそうにお話していたけれど、私が入っていくと「次は君かな」みたいな感じでお二人がくるりとこちらを向いて、部屋の雰囲気がすーと青色の試験モードに切り替えられていくのを感じた。

ああ、とうとう試験が始まってしまう!

なんの楽器弾いてるの、どんな曲弾いてるの、実技試験はどうだった、なんていう和声の試験には関係ないことを聞かれてそれに答えていくうちに「じゃあ、カデンツァ課題からやってみようか」ということになった。

カデンツァ課題に関しては、かなり準備をしていった。カデンツァ課題というのは、私が受けた音大では先生が指定した調のカデンツァを12小節分くらい、自分でドイツ語で解説を加えながらピアノで弾いていくもの。

私は確かa moll (イ短調)を指定された気がする。緊張しつつも、何十回も練習していったとおりに口から言葉が出てくる出てくる。弾き終わってほっとしていたところで、一番私がやりたくなかった和音の分析の方に課題が進んでしまった。

この課題では先生がなにかしらの和音をピアノで弾いて、それに対して受験生側がそれが何の和音か答える。実は日本で習ってきた和声とドイツのそれにはかなり異なる点がいくつもあって、それが私をひどく参らせていた。例えば、ドミソという簡単な和音。これが転回してミソドになったとする。これは日本では「第一転回形」ということになるのに、ドイツでは「ゼクストアコード(6の和音)」という。なぜゼクスト(6、という意味)かというと、根音のミ(和音の一番低い音)から見て一番高い音のドが6番目にきているからだ。

これらをすべて学習し終えてなるほど、と思えるまでにはいくらかの時間が必要だ。

先生がぽろんぽろんピアノを弾いていく。今先生が弾いているのが何調で、その調にとってその和音が何なのか(属和音など)その和音そのものは何という和音なのか(長3和音、減7和音など)。答えなければいけないことはたくさんある。

私はそれらをドイツ語で素早く答えなければいけないプレッシャーに押しつぶされそうだった。中には「これは分からなくてもいいけど、もしかして分かったりする?」なんて言われたものもあって、その時の私は残念ながらうまく答えられなかった。でもドイツの音大で1年間和声の授業を受けた今なら、落ち着いて答えられるかなと思う。

そうしてやっとその和声の試験が終わった。試験時間は多分10分程度のものだったと思うけど、私にはひどく長く感じられた。

その次に同じ部屋で続けてリズム打ちと新曲視唱の課題があった。これらは私がもともと割と得意としていたもので、それまでの和音分析と比べたらもう10秒くらいで終わった感覚だった。

和声の試験の後は聴音の試験があったけど、これも問題なく終わった。簡単なメロディー聴音と和声の書き取り問題たち。

聴音の試験は特にドイツ語を話さなくて良かったので気が楽だった。

最後が副科ピアノの試験だった。ここではちょっとしたハプニングが。(というかかなりのハプニング?)

私は副科ピアノ受験用に1曲だけを準備して熱心に練習していったけれど、本当は違う時代の作曲家から2曲を選んで弾かなければいけなかったのだ。

当日ピアノの試験会場で用意した曲を弾き終えてほっとしていると、試験官の先生から「素晴らしい!それで、2曲目は?別の時代からもう一曲弾いてくれるかな?」と言われ、なんと、耳を疑うとはまさにこのことだ、と思った。

そんな、今急に言われても・・だけど、試験官の先生は「入試要項に書いてあったでしょう?」と。あちゃー、あんまり確認してなかったかもしれない。

運よく最近まで練習していたバッハがまだ弾ける状態にあったので、急きょ、それを弾くことにした。試験官の先生方(2人いらっしゃった)がフレンドリーだったのもあって、ハプニングがあったにも関わらずピアノの試験はそれまで受けてきた試験のどれよりもリラックスして受けられた気がする。

このあと外国人だけがドイツ語の試験を別の会場で受けて、そして、全ての試験が終わった。

何はともあれ、私が勉強するべきなのは一にも二にもドイツ語だ、と思った。ドイツ語がもっとできていれば、入試要項に目を通したときに副科ピアノで2曲弾かなければいけないことなんてきっとすぐに理解できたはずだ。
それに、和声の試験でもきっとあんなに緊張せずに済んだに違いない。

こうして私のどきどきな受験が終わった。試験をすべてパスしたことが確認できて、今までにない安心感を感じながら蒸し暑い日本へ帰った。

高校を卒業したら、とうとうあの大学へ通うことになるのか。色々と苦労はたくさんしたけれど、、高校卒業後すぐに始まる新しい大学生活をドイツで始められることが決定して、私はとてもわくわくしていた。

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